会報     高松岳

          避難小屋は歌声酒場に変身


「日本秘湯を守る会」の奥山旅館は秋田県湯沢市の栗駒国定公園内にある。泉温80.5度c、泉質・単純硫化水素泉で白濁色、硫黄の臭い抜群の温泉。

    

山岳会温泉部長「東悟さん」気が狂うのではなかろうかと思うほどの名湯でした。

時代劇に出てくるような旅籠風の二階建ての旅館が数件、助さん、格さんがが飛び出してきても不思議でないほどのたたずまいとある。しかもです、入口は男女別だが中は殆どコ・ン・ヨ・クなんです・・・。これは事件です。

2,003年4月27日、夜八時大宮発で翌日早朝四時到着。八時間の道程で全員既にクタクタ。仮眠後、7時半登山口へ、足取り軽く目指すは高松岳1,349b。

早朝で雪質が固く滑りやすい。慎重に歩を進め、バケツを掘りながらさらに進むが思うように進まない。何回めかのトラバース、「キャー」と聞こえて振り向くと一人消えていた。

一瞬残る七人に緊張が走る。志田さんが2b位だろうか、幸い大木の暗部に落ちてうずくまっている。だが右足を大木に強打してかなり痛そう。小休止の後、「歩けます」に皆ホッとする。もう一bずれていたら何十bも流されていたかも・・・。

小1時間後、バランスを崩してまた滑った。だが今度はブッシュに両手で掴まり事なきをえた。

最初の大木の時もそうだが、本人曰く、咄嗟に足を出して身を防いだ。二度目も多分本能で手が出たに違いない。意外に、その時は冷静でしたと言う。端で見ていると金縛りにあったごとく助けになかなか行けないものだが、当人は冷静なんですね。

 私も4月5日の新潟、頸城駒ケ岳の雪山で同じくトラバースの途中、バランスを崩して30b程流された。運良くブッシュに掴まる事が出来、暗部に身を沈めて文字通り九死に一生を得るでした。

何故バランスを崩し、滑ったか、大いに反省をしました。皆さんに不安と心配をかけたことを、痛切に感じたことは云うまでもありません。

理由は多々あります。ピッケルを忘れた事。トップでバケツを堀り、疲れたのに交代を遅れたこと。雪山は慣れているという油断。スキーのゲレンデより勾配は緩いじやないかという錯覚。この錯覚は怖いのです。そして着ているウエア、殆どが化繊で滑りやすい。

    

今夜の泊まりは避難小屋。貸切であった。即宴会となるが、食事のために囲炉裏を使うが薪が湿っていて燃えない。見る見るうちに小屋は煙で充満。

何とか食事を終えて、尽きる事のない酒盛りが続く。ようやく燃えてきた薪が雰囲気を高めると誰かが歌いだす。懐メロ、ど演歌、昔の乙女のソプラノ・・・。

と、板さんが「♪夕〜べ、とおちゃんと、寝た時に、へ〜んな所に〇〇がある〜♪」と文部省唱歌を歌いだして、場は最高潮に盛り上がる。

 延々3時間も続いて、三々五々酔いつぶれてシュラフの中に。しかし、囲炉裏に生木を入れるので小屋は燻製つくりの箱の中のようだ。この後2ヶ月は匂いが取れなかった。



inserted by FC2 system