ロマン溢れる 四国・四万十川(沢登り)


 晩秋の突撃山行企画、日本最後の清流、「四万十川、滑床渓谷」が発表されたその日、計画書に真っ先に名前を記入。

その動機は、沢の難易度や内容はともかく、当然「道後温泉!」。

      

 Tリーダーの計画書の副題がこれまたふるっていた。帰りは「松山道後温泉へボッチャン!」と、夏目漱石の「坊ちゃん」の掛け言葉にさらに魅力は倍加してしまった。

     

 主題の『四万十川』の遡行ガイドによると、以上の通り。

     花崗岩の川床は、水がすべるように流れ、ブナの原生林、杉や桧が、見事なコントラストを見せている。

     沢自体は危険な所も無く、特に技術を要する場所もなし。

     出合いナメと名の付く長さ百m、幅三十mのナメが現れる。

     木もれ陽が差す川岸は光を反射して、清流が輝く。

     あちこちの小さな淵は、絵具を流したような水流に落ち葉が浮いて弧を描いている。

     幅広く流れるナメや急なナメ,トユ状ナメ、淵ナメとナメのオンパレードである。

     滑床渓谷は十二`にわたって続き、みんなナメ歩きに夢中になって、うっかりするとスリップしてしまう。

とにかく楽しい滑床である。「沢」年少組みの私には危険なし、技術なしはチョー魅力。

 二〇〇一年、十一月二日戌の刻すぎ、大宮代ゼミ前にどこからともなく、にこやかに美男2名、美女4名、計6名集合。

    

 リーダーのTさん車は高級寝台車に早変わり。すぐ寝る人、乾杯する人、おしゃべりする人・・・。ナビゲーターと運転手は気合を入れてスタート。

首都高、東名、名神、山陽道、瀬戸中央自動車道、、高知自動車道を通り、翌日朝十時高知へ。

 リーダー以外は殆ど観光気分!『はりまや橋』はどこ!どこ! アッという間に通り過ぎ、チラ!としか見えず。「カエセ、モドセ」と皆で無理を言う。リーダーは駄目!、「カット」で皆「ハイ!」。リーダーのにわか『いごっそう』(気骨)発揮に素直に従う。

 素直で従順になった門下生にリーダーは『桂浜』観光をプレゼントしてくれる  

                     

     「♪南国土佐を後にして 都へ来てから行く年ぞ 思い出します故郷の友が 門出に歌ったよさこい節を 

                                              土佐の高知のはりまや橋で 坊さんかんざし買うを見た♪」

乗客は既にコロンビアか寝コロンビアの歌手気取りで歌い合っている。

    

 売店で銘酒「酔鯨」の試飲、坂本龍馬の大銅像に表敬訪問し、「土佐犬」と『よさこい踊り』の大看板に見惚れながら南国土佐を後にする。

 横波街道の宇佐漁港の土曜市を冷やかす。カツオのたたきや諸々の新鮮魚貝、野菜をたっぷりGET.今晩は絢爛豪華だと舌なめずりする面々。

 昼食は「豪快海賊焼」だ! とリーダーは気前がよい。土佐の浦ノ内名物、海上レストラン、その名も「竜宮」。サザエ、巻貝、あさり、ホタテ・・・美味い。

 竜宮城のにわか乙姫様T子さんは貝に酔っている。

 小雨が煙る四国路を一路四万十川河口へ。でっかい太平洋と別れ、延々十九時間後、テン場に到着。「テン場近くの「ユースホステル万年荘」とロッジ風の「森の国ホテル」が四万十川の渓谷にピッタリ調和して観光客を和ましてくれる。

 グルメツアーご一行様に変身した「大宮料理学校」のメンバーの、本日の献立はT校長先生の特性キムチ鍋、T子臨時副校長先生のカツオのたたき、K子、S子、M子各先生のサラダ(何とワイン入りサ・ラ・ダ)とおつまみ、柿のデザート。たった一人の受講生の私は天にも昇る気持ち。幸せだな〜。

 夜9時、宴もたけなわ、各自ベッドルームへ、四万十川の清流の音がザザー、ザザーと小気味良く耳に響く、そして夜半から強くなった雨音がテントをリズミカルにたたき子守唄となる。忘却の彼方に吸い込まれていくのがなんとも心地よい。ふと見ると、お嬢様方は既にすやすやと夢心地で満ち足りた観音様のよう、四万十川はヤサシ〜。

    川柳一句

      山の女(ひと) 眠る顔だけ お姫様

          

 ツッー、ドッボーン 受講生一同「アレーッ」と、只見ているだけ。T突撃隊長とT子副隊長が果敢にすり鉢状のつるつる面に挑んで滑り落ち、急流にのまれて流される。300m位流されるのではないかとハラハラ・ドキドキ。

滑るとこうなるのだと教えてくれる。受講生只ひたすら『ビビル!』 三十分も経過し皆慣れてくると、50m、100mのナメをはしゃぎまわってはスッテ〜ン、ドボ〜ンの繰り返し。オモシロー。

 四時間強があっという間に過ぎて、頂上の八面山で休憩。 

周囲の山は紅葉真盛り、温暖の四国は十一月とは思えないほどのぽかぽか陽気、頂上で地元の熟年夫婦が差し入れてくれたミカンに舌鼓を打つ。

 遥か彼方には瀬戸の海が見え、真珠の養殖と漁で行き交う白い船が鮮やかに映える。その向こうには九州の地が垣間見える。

 岬まわりの小さな船に丁度若いときの『小柳ルミ子』が乗っていた。

  

 「♪ 瀬戸は日暮れて 夕波小波 あなたの島へ お嫁に行くの 若いと誰もが

        心配するけれど 愛があるからだいじょうぶなの だんだん畑と 

   さよならするのよ 幼い弟 行くなと泣いた 男だったら 泣いたりせずに

                 父さん母さん だいぎにしてね ♪」

 高知から大洲を抜け松山に向かう途中、地元の臨時販売所で柿とミカンをしっかりGET。本場で朝もぎゆえ美味しさは抜群である。女性陣はしっかり者、『埼玉県青果物卸売業者』に早変わりして値踏みをし、しかも値切ろうとしている。

 夕日がまぶしい県道沿いは段々畑にミカンがたわわに熟している。

四国がこんなに山ばかりとは想像していなかった。日本列島の中でも四国は小さい、その小さい島は真ん中に石鎚山、剣山等を始め、山脈で占めており、海沿いの端に道路と集落が遠慮がちに存在している。だから畑は殆どが段々畑である。云うならば山梨県の高速を走る時、ブドウ畑と桃の畑で春は桃源郷であり、素晴らしいパノラマである。

四国路も非常にのどかである。青い海、段々畑の緑の木、柿とミカンの橙色・・・

 

 「 ミカンの花が 咲いている 思い出の道 丘の道 はるかに見える

                   青い海 お船がとおく 霞んでる

 

  

「ドッボ〜ン」・「ボッチャ〜ン」今度は温泉、300年の歴史誇る日本最古の温泉。

道後温泉本館は明治二十七年建築、「重要文化財指定」。

手をあわせ、手をもんで、次に柏手を打って、ついでに十字を切り世界中の神・仏に感謝の気持ちを伝えて身を清める。目を閉じると温泉博士「高橋トーゴ」さんの悔しそうな顔が浮かんでくる。さすが300年、雰囲気が違う。江戸の浮世絵に出てくるような何とも落ち着いた風情がある。

 風呂代300円は安かった。風呂上りの艶めかしい大宮のお姉様方と温泉街、高級ホテルの超高級鮨屋に入る。

 ここでも地酒、地ビールと、珍味料理、寿司と食べ放題。これは一人三万円だな〜と思いきや、何と三千円。 

 深夜、松山を経ち、本四間三番目の西瀬戸自動車道で尾道へ。ロスタイムを利用し、金沢市の金沢漁港へ朝飯ツアーを全員一致で決定。食べる事となると異を唱える人は居ない。一時間半して市場へ、この頃7時半。店主がこれから「競り」をしてから飯を炊く、「待つか?」全員、「ハイ」。

 威勢のよい掛け声で競りが始まる。固唾をのんで意味不不明の隠語を聞きながら見入っていた。初めての体験だ!

 食べる刺身はタコ、イカ、エビ、えんがわ、出世魚のイナダ・・・、味噌汁には鯛とエビが無造作に放り込まれていて抜群の味、飯は元祖コシヒカリ。三時間も待たされたのに皆ニコニコ。新田商店のはげ社長の計らいで一人1300円はチョー安い。「また来いよ!」ウレシ〜。

 今度は「埼玉県鮮魚商協同組合」ご一行様に変身し、魚貝をまたまたGETし車中に。

 尾道街道、金沢にいたる深夜の高速道路、サービスエリアによるたびに奇妙な集団の貸切バス五台に会う。皆女性である。ほぼ中年である。きちんと正装である。バスが止まるとトイレに一目散で足並み揃えて「ドッドッドッ!」、われら山岳会婦人部も一目散で「タッタッタッ!」

 こちら寝台車、Tリーダーは「スヤスヤスヤ!」

 バスの張り紙を見に行った。「倫理公正会婦人部・・・」に見えた。後日、調べると「社団法人倫理研究所」で朝の集い、モーニングセミナー、清掃活動を中心に行う宗教団体で、一説には家庭の悩みを抱える人が多いそうな。それにしても深夜に女性集団二百人前後が・・・見につまされますネェ。

  川柳また一句思い出す。

      「IT化 いいえ我が家は 愛低下」

 相変わらず、我がTリーダー「御教祖様」はスヤスヤとお眠りされていらっしやる。悩みなんぞ一切ない、そんな寝顔です。

 頼もしいリーダーに今回の突撃山行の企画実践に感謝を表明し帰途につきました。「有難うございました。」 来年のこの時期は何処、次回は何処と楽しみを残しながら、また明日から仕事にガンバロー。

 締めて2万5千円は安かった。楽しい楽しい西国の山行でした。

              終わり

 

 

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