シリア・アラブ共和国紀行
イスラム教の「ウマイヤドモスク」
2010年12月、今年最後の海外旅行先は中東、イスラム国家のシリアとした。 シリアの見所は、イスラム教、古代ローマ遺跡、シルクロード隊商都市、世界で初めて農業が生まれた、アルファベットの原形が生まれた等である。 |
☆ 歴 史
時 代 | 出来事 | 時 代 | 出来事 |
紀元前3000年 | アラビア半島からセム語系民族が移住。 | 16世紀 | オスマン・トルコ朝の支配となる。 |
紀元前4世紀 | エジプト、ペルシャ等の支配民族が交代。 | 1918年(第一次世界大戦終了) | オスマン・トルコが破れ、独立。ファィサル1世。 |
紀元前4世紀 | アレキサンダー大王の支配下となる。 | 1918年 | イギリス・フフランスの秘密協定で、シリアはフランスの植民地となる。ヨルダンはイギリス。 |
紀元前3世紀 | シリア砂漠のパルミラ国家がローマ帝国と共存関係。 | 1946年 | フランスから独立するが、政情不安定。 |
紀元前3世紀後半(キリスト教400年間) | ローマ帝国の支配下。 | 1958年〜1961年 | エジプトと「アラブ連合共和国」 |
7世紀 | アラブ人がローマのビザンチン帝国を破り、シリアの支配権を握る。 | 1963年 | 社会主義政策を推し進める。 |
661年 | ウマイヤ朝がダマスカスをイスラム帝国の首都とする。 | 1967年 | 第一次中東戦争〜第三次までイスラエルに敗北。ゴラン高原を失う。 |
11世紀 | 十字軍との戦い(100年間) | 1970年 | 前大統領アサドが無血クーデターを成功。 |
12世紀 | 第3回遠征の十字軍との戦いでイスラム軍勝利。 | 2000年〜 | 前大統領の次男アサドが二代目大統領。(イギリス留学、医師) 北朝鮮と核開発で協力しているという疑いをアメリカに持たれている。 |
☆ シリア・インフォメーション
1.人口 2000万人 | 5.宗教 イスラム教85%(スンニ派 70%) |
2.面積 日本の半分 | 6.言語 アラビア語 |
3.首都 ダマスカス (人口200万人) | 7.産業 農業、商工業、鉱業、石油資源 |
4.民族 アラブ人 85% | 石油資源はテロ支援国家の疑いが晴れず、先進国の援助が得られず低迷。 |
☆ 出 発
航空会社はアラブ首長国連邦の「エミレーツ航空」。今や世界で最も景気の良い、中東石油産出国なのでサービスも良い。一路ドバイへ向かう。
スリッパ、歯磨きセットのグッズあり。何より日本語の映画、ラジオなどが完備されており12時間のフライトが長く感じない。ドバイ空港では、待ち時間が4時間以上になるとレストランでの飲食が無料となるサービスがある。これではJALなど太刀打ち出来ないだろう。
いかにもアラビアらしいフライト・アテンダントの制服。 料理もうまいが、アルコールは要求次第。 中継地はドバイ
☆ ドバイ国際空港(アラブ首長国連邦)
中東ペルシャ湾のアラブ首長国連邦「ドバイ」の夜景。 石油景気でエンピツのように建つビル群
シリア首都「ダマスカス」のゲート案内。 ドバイはハブ空港、とにかく広い。免税店を走り回る女性は目の色が殺気立っている?
アラビアンナイトの壺 中東と言えば砂漠、砂漠と言えばラクダ
今では世界最大級の免税店を誇るドバイ国際空港。
レジ係りはアジアやアフリカ系が多い。 ジュースは棚の上の果物で絞ってくれる、さすが南国。
外国人で成立する湾岸産油国 空港でタクシーを拾うとフィリピン人の運転手、ホテルに到着するとインド人のベルボーイ、フロントではエジプト人、ロビーの掃除はスーダン人かソマリア人、レストランのボーイはバングラデシュ人、そしてタイ人のメイド、建設現場ではパキスタン人、ネパール人のボーイがピザ・バイクに、オフィスヌにはレバノン人かパレスチナ人かイラク人が働いているというドバイ。 |
ドバイからシリアの首都ダマスカスまでは3時間半、しっかり機内食が出る。アルコールも飲み放題。 右側のドバイからアラビア半島をひとっ飛びで左上のダマスカスへ
☆ 到 着 (シリア首都 ダマスカス)
シリアのダマスカス国際空港 シリアのガイドは、その名も「フセイン」さん。早速シリアのせんべいを振舞う。
動画 : シリア:Aladdin Travel Tourism
ダマスカス市内 シリア国立博物館(館内撮影禁止) 世界初のアルファベツトが彫られた粘土板がある。
シリア全土の観光MAP (ダマスカスは左下)
博物館の庭には何やら黒装束の団体が、ユダヤ人か? それともアリババとその仲間の盗賊か? ロシア正教会の御一行様でした。 美人もいたな〜。
観光バスに揺られてシリアを行く・・・ はためくシリア国旗
砂漠のオアシスに存在するダマスカスは紀元前2000年から、交易の中継地として激動の歴史を刻んできた。
アザーン・・・ 朝に夕に礼拝を呼びかけるアザーンの鳴り響くなか、黒いベールをかぶった巡礼者がそぞろ歩く旧市街は異様に映る。イスラム教に 触れる機会があまりない日本人は、街中に鳴り響く大音響にまず度肝を抜かれる。 しかも1日5回も聞かされる。朝の5時頃、ホテルの部屋まで聞こえてくる。何事かと飛び起きてしまう。そしてひざま付いて、お祈りが始 まる。1日5回もだ。 |
イスラム教第4の聖地「ウマイヤド・モスク」 ウマイヤ朝の時代715年に建てられた、世界でも指折りの歴史を持つモスク(イスラム教の礼拝所)。
先ずは腹ごしらえ、その名も「ウマイヤド・パレス・レストラン」 ヘルシーな野菜が多い。イスラム国家なのでアルコールはない。寂しい!
イスラムのモスク故、女性は髪や派手な服装を隠すため、強制的にこんな服を。トホホッ! 中庭 モスク内の床は暖房が効いていた。
(左) 洗礼者ヨハネ教会(キリスト教)を改築して建てられたモスク。よってモスクには珍しい、キリスト教の教会によくあるステンドグラスがある。(中)は聖ヨハネの首が納められていると言われる神殿。 (右)一心不乱にお祈りをするイスラム教徒
☆ イスラム教徒の分布図
イスラム教徒は世界に13億人。世界の人口65億人の1/5がイスラム信者。
イスラムの人は女性好き、何せ4人までは奥さんを認められているのだから。 ホテル内にはクリスマスツリー ホテルにはアルコールがあった。先ずは安心。
☆ パルミラの遺跡群(世界遺産)
首都ダマスカスから3時間、夜8時頃到着、周囲には何も見えない。 朝起きると、周囲は全部砂漠、唖然とする。
パルミラとはナツメヤシを意味する。砂漠のオアシスの中に存在する。2世紀に栄華を極めたシルクロードの隊商都市で、その通行税を取って栄えたと言う。
パルミラ博物館 博物館前には物売りが熱心、こちらは観光に熱心、どちらが勝つか負けるか・・・
遺跡群への入口、記念門。270年頃、当時のゼノビア女王が君臨し、小アジアからエジプトまで支配していた。
エラベール家の塔墓 あまりにも広いのでラクダが乗り物 高さ150mのアラブ城壁
2000年前の残骸か? こんな小さな子どもが絵葉書を持って、1ドル、1ドル・・・。
地下にある3兄弟の地下墓室
砂漠の中の花 ベル神殿 : 主神ベルと太陽、月の3神に捧げられたベル神殿。耐震構造として金属のずれ止めが用いられていた。
ベル神殿
ベル神殿
ベル神
ベル神殿
列柱通り(真中はラクダが通り、人は左右の通りを歩いた)
シルクロードの通り道で通行税で栄えたと言うパルミラ。 ラクダは楽だよ!と勧める現地人。 安い、安い。
疲れたので乗るッか。 1ドル〜。 売人は次の遺跡にバイクで追っかけ。
アラブ城からのパルミラ市街、人口3万人の小さな町。町の経済は観光とオアシス農業。 右に行くとイラクとの表示。
昼食はカプシー、鶏肉とご飯。ビールはレバノン産。
一路、首都ダマスカスへ。 砂漠の夕暮れ、見惚れる景色です。
☆ ダマスカスへ
ダマスカスの丘にあるカシオン山は夜景が人気。しかし、頂上には軍事基地があり警戒が厳しい。アサド邸もこの丘に。
シリア周辺の住宅の2階には柱が目立つ。家庭を持って家を建てると先ず1階、子供が出来ると2階、孫が出来ると3階となる。 オレンジは機械で絞る。
☆ ボスラ遺跡
首都ダマスカスから車で1時間、ヨルダンとの国境近くにある巨大なローマ遺跡のボスラ劇場。紀元前2世紀から造られた。
幅102m、37段の客席には6000人が着席でき、さらに3000人分の立席がある。最上段に上がると足がすくんでしまう。
北島三郎がここで「与作」を披露した。 音響が良くマイクなしですべてに聞こえる造りだ。右の写真、最下段の小さな穴が音響効果に役立つと言う。
☆ 歴代大統領
ハーフィズ・アル=アサド | バッシャール・アル・アサド |
第9代大統領 1971年〜2000年 | 第10代大統領、200年〜 先代の次男。長男が交通事故で亡くなったので、止む無く後継となる。ロンドンで眼科医を目指していた。 |
シリア旅行の危険性は? と注意したが、意外と心配は無用であった。 東西冷戦の狭間で苦難を強いられ、ソビエトの社会主義崩壊で更に苦難、イラクや北朝鮮などの支援国家と言うことでアメリカや西側諸国からの技術支援が得られず、石油開発が進んでいない。そんな中で観光業はシリアの目玉であろう。 世界のアラブ国家、イスラム国家が落ち着きを取り戻した時に、魅力あるシリアが復活、注目されるだろうと考えた。何しろユーフラテス川が控える歴史の古い地区は魅力があふれている。 |
シリア編 終わり
参考文献
中東の考え方 酒井啓子 講談社現代新書
イスラムの真実と世界平和 内藤正典 マガジンハウス
世界の宗教 21世紀思想研究会編 河出書房新社
マリアのウインク 視覚デザイン研究所編
Wikipedia
地球の歩き方 ダイアモンド・ビッグ社